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ドイツ・フランス・カメルーン報告

 

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授

木村大治

 

平成28年12月10日から21日まで、ドイツ、フランス、カメルーンにおいて研究打ち合わせ、研究発表、資料収集などをおこなった。

ドイツではまずケルンを訪れ、12月11日、本プロジェクトで派遣されケルン大学に滞在中の若手研究者、訾彦訚(シ・ゲンギン)氏と面談した。現在執筆中の、アフリカ地域研究資料センター出版助成によって出版予定の著書についての話題、ケルン大学の研究者の動向、日本とドイツでの大学院生の指導方法の違いなどについて話がはずんだ。(写真1 シ・ゲンギン氏と、ケルン大聖堂の前で)

 

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続いて12日に、本プロジェクトの連携研究者であるThomas Widlok博士(ケルン大学 グローバルサウス研究センター教授)と面談した。Widlok氏は、狩猟採集民研究者として旧知の仲であり、昼食を共にしながら話をした。1月に京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科に来日するCharlie Goodwin氏、ジンバブエ人の研究者Obert Bernard Mlambo氏らも同席した。Goodwin氏のナミビアでの研究の調査方法についていくつかやり取りがあったが、この種のディスカッションは彼の来日後も続けていきたいと考えている。

 

13日にはケルンから列車でブレーメンに移動し、カメルーンの養蜂の映像記録をおこなっている映像人類学者Martin Gruber博士(ブレーメン大学 人類学・文化研究研究所)(写真2 Gruber博士と)を訪問し、研究所のコロキアムで “ Congo War、 Long-Distance Walking Trade and Bushmeat Hunting”と題する発表をおこなった。Gruber博士との議論を通じて,映像人類学的な民族誌は今後のアフリカ地域研究について考える上で重要な手法を提供してくれ,とくに本プロジェクトにおける「地域の空間的・時間的な組織化」との関わりが深いことを再認識した。コロキアムには教員5名、学生10名ほどの参加があった。発表内容は、内戦で交通体系が破壊されたコンゴ民主共和国中央部において、現金稼得のためにブッシュミート・ハンティングおよび森林伐採が盛んになっているというものだったが、発表後のディスカッションで何人かから「現地の人たちは自然保護についてどういう考えを持っているのか」といった質問があった。この問題については簡単に答えることが難しく、その場ではうまく説明できなかったが、今後この点について論点の整理を進めていく必要があると感じられた。私自身の研究にとっても、大変有益なコロキアムであった。(写真3 ブレーメン大学でのコロキアムが終わった後の食事)

 

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14日はブレーメンから飛行機でパリに移動した。アフリカ関係の書籍が集められていることで知られるハルマッタン書店(写真4 パリ・ハルマッタン書店)のすぐ近くに宿を取り、書店でアフリカ地域研究に関係する書籍を踏査し、コンゴ関係の本を6冊ほど購入した。

 

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15日にパリ、シャルル・ド・ゴール空港からカメルーンの首都ヤウンデに飛んだ。夜8時半頃到着したが、迎えを頼んでいた農業研究所 (IRAD; Institut de Recherche Agricole pour le Development)の車が来てなかったので、仕方なくタクシーで市内のホテルに向かった。ヤウンデには19日夕方まで滞在したが、この間、アジア・アフリカ地域研究研究科で借りているカメルーン・フィールドステーション(本プロジェクトでも活用する)の家賃の支払いと管理状況の確認、IRADのNdo Eunice Epse Mfou’ou博士訪問(写真5 IRADのNdo博士と)、ヤウンデ第1大学人類学科(写真6 ヤウンデ第1大学人類学科の建物)のMebenga Tamba Luc教授訪問(写真7 ヤウンデ第1大学 Mebenga教授と)などをおこなった。残念ながら、本プロジェクトの主要連携研究者であるMbonji Edjenguélé教授は不在で会うことができなかったが、Mebenga教授とは、今後の研究協力に関して意見を交わすことができた。また、京大総長裁量経費「海外調査における安全確保」の実施経費でカメルーンに来ていた国立民族学博物館の戸田美佳子氏(写真8 戸田美佳子氏の資料収集の様子)と合流し、日本大使館およびJICA事務所で、安全確保に関するさまざまな資料を入手した。

 

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19日夜にヤウンデ発、パリ、アムステルダムを経由して21日に関空に到着した。結構あわただしいスケジュールではあったが、各地でさまざまな形で研究協力を押し進めることができたと考えている。