概要
本事業は、地域研究のための研究環境が卓越しており、従来から京都大学のアフリカ地域研究資料センター(以下、アフリカセンター)と大学院アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻(以下、ASAFASアフリカ専攻)が学術交流を行ってきた海外の連携機関との双方向的な学術交流をさらに推進し、グローバル化が著しい現代世界において「アフリカ地域」を理解していくための研究パラダイムを再編します。
この目的を受けて、連携機関がこれまで蓄積してきた教育研究の成果やこれから目指している取り組みを以下の3つの観点から整理・分析し、これと本研究科が推進してきた地域研究との融合をはかります。
1.地域の空間的・時間的な組織化
「地域」は常に変動しています。そして、その変動を理解するための知的枠組みも変転を続けています。「地域」を空間的・時間的にどのように組織化されたものとしてとらえるかは、地域研究の理論的な枠組みの根幹をなす争点の1つです。本プロジェクトでは、アフリカ大陸とその周辺について、地域研究の優れた成果をあげてきた諸研究機関がこの問題にどのような解決を与えてきたのかを探索します。さらにそうした「地域」のとらえ方とアフリカセンターおよびASAFASアフリカ専攻のそれとを比較考量することを通じて、地域研究の新たなパラダイム形成に寄与することをねらいます。
2.地域のローカルな知の活用
アフリカセンターおよびASAFASアフリカ専攻の研究者は、アフリカに生きる人びとが創り出すローカルな知(=在来知,Local knowledge)の生成の現場に立ち会ってその動態を解明するとともに、そうしたローカルな知がアフリカの抱える諸問題の解決に積極的な役割を果たす可能性を探ってきました。本プロジェクトでは、こうした観点から地域研究に関する卓越した諸研究機関がアフリカのローカルな知をどのように研究し、その成果を活用しようとしてきたのか明らかにします。さらにこれらの比較研究を通じて、ローカルな知とそれ以外の知の関わりについて、理論的な理解を進めることを目指します。
3.地域のデザイン
地域研究は、その成果に基づいてこれからその地域をどのようにデザインしていくべきかについて積極的に発言してきました。またこれに加えて、その実務を担う専門家や行政官を数多く輩出してきました。とくに本プロジェクトでのパートナーとなる諸研究機関は、地域に関わる学術研究と政策科学を融合させるさまざまな手法を編み出してきたことで知られています。本プロジェクトでは、これらの諸研究機関と双方向の若手研究者育成を進め、組織間の学術協力をさらに推進します。これによって、アフリカを始めとする世界のさまざまな地域が抱えている現代的な諸問題を乗り越えて,多文化が共生していくための道を探ります。
これらを達成するため、ケルン大学、ドイツ霊長類センター、エジンバラ大学、国立科学研究センター、アジス・アベバ大学、ヤウンデ第1大学、ケープタウン大学、アンタナナリヴ大学という8つの連携機関との協業関係を強化し、若手研究者をこれらの機関に派遣して国際共著論文の執筆などを目的とした共同研究を行います。