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フランス報告

京都大学

アフリカ地域研究資料センター

梶 茂樹

 

フランスへ行ってきた。目的は当頭脳循環プログラムがフランスでの提携相手としているフランス国立科学研究所(Centre national de recherche scientifique)の社会科学高等研究院(École des hautes études en sciences sociales – EHESS)との提携強化である。日本出発は3月19日、帰国は23日で、フランス・パリでの滞在は実質3日、しかも到着が週末にかかったため、ビジネス・トークは3月21日の1日だけとなってしまった。しかしながら、有益な滞在となった。

フランス国立科学研究所社会科学高等研究院ではDr. Emmanuelle Olivierとお会いした。Olivierさんは民族音楽学者で、ブッシュマンの音楽をテーマに博士論文を書いている。当頭脳循環プログラムの高田准教授と親しく、高田氏を通して面会のアポをとってもらった。彼女はしばしば日本に来ており、私も18年前に1度お会いしている。当時は富山大学の竹内潔氏が科研で日本に呼んだもので、富山のあと東京に来た折、私が案内した。当時、私は東京にいた。もちろん私は覚えていたし、また彼女もよく覚えていた。

フランス国立科学研究所社会科学高等研究院というのは、もともとは高等研究実習院(École pratique des hautes études -EPHE)というものであったが、幾つかの改革を経て、1975年から現在の形になったものである。フランスにおける社会学部門の一大教育・研究機関である。ホームページを見ると3000人の学部学生、1500人の博士課程学生、300人の研究者を擁するとある。Olivierさんは本部建物ではなく、少し離れたゲオルグ・シンメル・センター(Centre Georg Simmel)で働いている。3月21日の午後、研究室を訪問した。

Olivierさんは研究センター勤めであるが、幾つかのところで授業を行っており、何人もの学生―主として大学院生―を指導している。これはASAFASの教員であり、かつ当センターのセンター員である我々と立場がよく似ている。そのこともあり、学生・研究員の交流は積極的に推し進めたいということであった。パリでは、ASAFASの学生で私が主指導教員となっている御手洗なつ美さんと会い、彼女も私に同行してOlivierさんに会いに行ったが、研究上のことで問題があったらいつでも相談に乗るという嬉しい申し出もしてもらえた。御手洗さんはASAFASに籍を置きながら、「トビタテ!留学JAPAN」のプログラムによりパリの高等師範学校(École normale supérieure)に留学しているものである。元気で、研究も進んでいるようであった。

パリではあと2人の研究者と会った。1人はパリ第3大学の音声学研究所(Institut de phonétique)に勤めているDr. Didier Demolinである。Demolin氏は音声学者であるが、民族音楽学にも興味を持ち、コンゴのマングベツなど様々な民族音楽をCD化し公表している。私とは、もう30年来の知己である。Olivierさんとも懇意である。Demolin氏とは、ピグミーの言語の研究や太鼓言語の研究など様々なテーマの共同研究案件を抱えている。もう1人の研究者はDr. Françoise Hamersで、エイズの研究をしている女性医学研究者である。彼女とも、もう30年来の付き合いである。Demolinsi 氏もHamers氏も2人ともベルギー人であり、私とはコンゴ(旧ザイール)繋がりの研究仲間である。パリ滞在の最終日である3月22日夜は、サンミシェル近くのレストランで、御手洗さんも含め4人で楽しく研究、そして世界の様々な地域のことを話し合った。

 

図1

Dr. Emmanuelle Olivierと研究室で

 

図2

社会科学高等研究院の門の前で