南アフリカ報告
―シーダーバーグでの国際会議を中心に―
京都大学大学院
アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
高田 明
平成29年3月23日から29日にかけて,南アフリカのシーダーバーグを訪問し,国際会議“KBA phonological typology meeting and Riezlern symposium 6”への参加および本研究のケープタウン大学におけるカウンターパートであるケープタウン大学アフリカ言語多様性研究センター(CALDi)のMatthias Brenzinger所長らとグローバル化にともなうアフリカ地域研究パラダイム再編に関する研究打ち合わせを行った.
シーダーバーグは,ケープタウン近郊にある山岳地域で,コイサン諸語の話者の祖先だと推定される人々が描いたとされる壁画が多く残っている(写真1,写真2).また,南アフリカ有数のワインやオレンジの産地としても知られる.今回はこの地に世界各地からコイサン諸語やその社会について研究を進めている言語学者,人類学者,アフリカ地域研究者が集まり,“KBA phonological typology meeting and Riezlern symposium 6”という国際会議を行った.
写真1 雄大なシーダーバーグの景観
写真2 シーダーバーグの山岳地帯に残る壁画
この国際会議では,コイサン諸語に関する音声学,形態統語論,語用論,コミュニケーション論,地域開発などについての最新の研究成果について発表した.これは,通常は世界の各地で一別々に研究を進めているコイサン諸語研究者が一同に会し,これまで蓄積してきたデータの集中的な検討を含むインテンシヴな意見交換を行う貴重な機会となった.報告者および本プロジェクトで若手研究者として派遣された丸山淳子氏も,それぞれ“Reconsidering regional structural comparison”,“Changes of personal names among Gǀui and G‖ana San and their socio-historical contact with neighboring Nharo San”というタイトルで発表を行った.
またMatthias Brenzinger所長および,以前CALDiで研究員を務めており,現在はイギリスのロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)で研究員を務めるSheena Shah氏とは,京都大学とケープタウン大学の間で進めている共同研究の進展や今後の各種の活動の展開について,具体的な情報交換や調整を行った(写真3).
写真3 CALDiのMatthias Brenzinger所長
これらの議論によって得られた知見,とりわけサンの諸言語の地域間比較やその社会開発への応用に関する知見は,本プロジェクトのさらなる展開にとって非常に有益なものであった.今後は,2017年12月に本プロジェクトが主催する国際シンポジウムやその後のケープタウン大学との共同研究でそうした可能性をさらに追究していきたい.また今回の国際会議で初めて会った研究者らとネットワークを構築する見込みが得られたことも,今回の派遣の重要な成果と考えている.