エチオピア報告
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
金子 守恵
平成29年1月4日から10日まで、エチオピアにおいて研究打ち合わせおよび資料収集などをおこなった。
1月4日アジスアベバ到着後、アジスアベバ大学社会人類学部学部長Getaneh Mehari博士とアフリカ地域研究パラダイムに関する研究うちあわせをおこなった。アジスアベバ大学社会人類学部は開学部50年をこえたことを契機に、学部長であるGetaneh博士と、これまで京都大学アフリカ地域研究資料センターとアジスアベバ大学社会人類学部とがとりくんできた連携およびその研究成果について検討し、それらの連携活動や研究レビューを、このプログラムの成果の一環として刊行することについてディスカッションをおこなった。また、本プログラムが来年度予定している国際会議について情報共有およびセッション内容についてのディスカッションをおこなった。そのなかで、地域に暮らす人々がこれまで培ってきたローカルな知を理解し、現代的な文脈において活用する様を、京都大学およびアジスアベバ大学の研究者や院生によるフィールドワークの知見をもとに発表し、それらをもとに現代におけるアフリカ地域を理解するためのパラダイムを再編するという目的を再度確認し、発表候補者について議論した。これに加えて、現代的な文脈として、学校教育に注目し、それによってコミュニティで実践されているローカルな知の現状について検討することも再度確認した。
翌日には、本プログラムの主要連携研究者であるGebre博士とともに、京都大学とアジスアベバ大学が連携しておこなってきた研究活動のうち、エチオピア西南部を中心とした人類学的研究についての連携およびレビューについて検討した。加えて、エチオピア西南部地域の治安状況など現地情報についての情報共有をおこなった。さらに、本プログラムが来年度予定している国際会議について情報共有をおこなった。
1月6日—7日にかけて、アジスアベバからジンカ市へ移動した。ジンカ市では、アルバミンチ大学南オモ研究センター(写真1)を訪問し、アフリカ地域研究パラダイムにかかわる研究のなかでも、生業活動に見出される在来の知識の生成についての資料の収集をおこなった。県庁の行政官とも面会し、生業活動に対する政策とその影響などについて情報収集をおこなった。その後、4年ほど前に市へと昇格した地域を訪問し、市長と面会して、現在の生業活動の状況について聞き取りをおこなった。市への昇格にともなって農地が宅地へと変更され、これまでの生業活動だけでは自律的な生活が困難になっている状況において、人々の生業活動の様子やあらたな取り組みについて聞き取り調査および関連の資料を収集した。
写真1
1月8日には、エチオピア西南部においてバショウ科植物エンセーテの栽培地域である高地農村(写真2)を訪問し、村役場において、村人たちの生業活動の現状と農業政策の影響に関して情報収集をおこなった。近年、主に高地農村において、高等教育をうけた若者を中心に、近代的な技術をもちいて農産物を生産する共同組合などが設立されている。その組合の中心人物にインタビューして活動状況を確認したり、関連資料などを収集した。聞き取りでは、農産物を生産しても、重量車両が通行できるようなインフラが十分に整備されていないため搬出量が制限されてしまうこと、これまでには流通していなかった加工品を生産しても消費者のあいだでその加工品の利用が周知されていないために販売量が伸び悩んでいることなどの情報を得た。その後アジスアベバへむかって移動を開始し、9日にアジスアベバに到着した。
写真2
その後、Gebre博士と再度面会し、派遣者が収集してきた資料や情報などを共有しながら、西南部におけるアフリカ地域研究パラダイム再編に関わる今後の研究打ち合わせをおこなった。1月10日には日本へむけて帰路についた。