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京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教授

木村大治

平成29年11月11日から23日まで、カメルーンに渡航し,研究打ち合わせ、研究発表、資料収集,フィールドステーションの整備などをおこなった。

11月11日,関空出発,パリ経由で12日夜カメルーンの首都ヤウンデに到着した。定宿にしているメウミホテルに宿泊する。

13日朝,換金,スマホ用のSIMカード購入などを済ませ,タクシーで提携校であるヤウンデ第1大学に赴く。10時半,カウンターパートのMebenga Tamba Luc教授と再会。頭脳循環プログラムで派遣された園田浩司氏の受け入れ教員であるMbonji Edjenguélé教授にも挨拶することができた(写真: 1_Mbonji Edjenguélé教授と木村,2_Mbonji Edjenguélé教授,Mebenga Tamba Luc教授)。翌日(14日)に人類学科の学生相手にレクチャーをしてくれないかと言われ,すでにあるパワーポイントの資料を使えばあまり用意もいらないだろうと考えてOKする。昼前に大学を辞して,ヤウンデ市内にあるアジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)のフィールドステーションの家賃を払いに,大家さんのオフィスに行く。そう遠くないし,市内の様子を見たいこともあり,歩いて行くことにした。かなり暑かったが,ヤウンデは今のところ昼間一人で歩き回ってもさほど危険はない。昼過ぎ,無事支払いを終えて,その足でフィールドステーションへ行き,部屋の様子を確認する。ただこのフィールドステーションは,最近周辺の治安が悪化してきたので,別の場所に移すことを計画している。16時,タクシーでホテルに帰る。

14日,11時にヤウンデ第1大学へ。12時からレクチャー開始。しかし,パワーポイントの用意をしていたのだが,プロジェクターが動かないと言われる。学生は30人ぐらい来ていて教室は満杯だったが,仕方がないので教壇の上に私のノートパソコンを置いて,その小さな画面を見てもらうことにする。レクチャーは英語でおこなったが,フランス語が得意な学生が多いので,Mebenga教授がフランス語で解説をつけてくれた。あまり学生たちが聞くことがないだろうテーマをと考え,カメルーン東南部に住む狩猟採集民,バカ・ピグミーの相互行為の特徴について,動画を交えて喋った。話したあと活発な質問があったが,時間切れになってしまい,もう少し討論したいところだった(写真: 3_ヤウンデ第1大学人類学科でのレクチャー,4_ヤウンデ第1大学人類学科の教員たち,5_ヤウンデ第1大学人類学科の人たちと)。 われわれ日本人研究者も,もうすこし積極的にこのような交流の機会を持てば,どんな仕事をしているか知ってもらえるし,現地の優秀な学生をリクルートする機会も増えるだろうと感じた。夕方,カウンターパート機関の農業研究所(IRAD; Institut de Recherche Agricole pour le Development)の車がホテルに着くはずだったが,来ないので運転手に電話する。カメルーン東南部の調査地に行っていて,ヤウンデまで帰ってくる予定だったのだが,途中で泥道にはまった大型トラックが前を塞いでいて通れなかったので,途中の町までしかたどり着けなかったのだという。

15日朝,運転手のアマン氏がホテルに到着。荷物を積み込んで8時半に調査地グリベ村に向けて出発。ほぼ丸一日の行程である。ヤウンデ市内で給油し,調査地の朝食用にパンを30個買う。12時半,途中の町アヨスで昼食。16時半,ロミエの町で休憩。その後森の中の道で,トラックに道を塞がれて通過に時間がかかり,グリベ村のステーションに到着したのは22時過ぎだった。ASAFASの安岡宏和准教授,卒業生の平井将公さん,院生の田中文菜さんが出迎えてくれた。16日から18日は,グリベ・ステーション(写真: 6_グリベ・ステーション,7_グリベ・ステーションに集まった村人たち)に滞在し,カメラトラップを用いた動物相の調査の様子を見たり(写真: 8_カメラトラップのデータを取り出す安岡准教授),熱帯林の写真撮影をおこなったり(写真: 9_グリベ・ステーション,10_グリベ村)した。また,バカ・ピグミー(写真: 11_バカ・ピグミーの葬儀)の子どもの遊びを調査している田中さんのビデオを見て,今後の進め方へのアドバイスをおこなった。19日朝,グリベ出発,やはり丸一日かかり(写真: 12_悪路で車が立ち往生する),22時前にヤウンデのホテルに到着。ASAFASの平野美佐准教授も日本から到着していた。

20日は,安岡さん,平野さんと一緒に新しいフィールドステーションの候補となっている家を視察した(写真: 13_新しいフィールドステーションの候補1,14_新しいフィールドステーションの候補2)。日本人調査者と長く関わってきたシモン・ピエール氏の所有する建物である。ヤウンデの中心部からは少し遠いが,いい環境だし,現在のフィールドステーションと同じ値段で貸してくれるということで,来年度に向けて移転の準備をすることになる。その後,21日にヤウンデを発ち,パリ経由で関空に到着した。

今回は短期間ではあったが,現地研究者・学生との学術交流,研究環境の整備を推進することができ,たいへん意義のある渡航であった。

 


写真1 Mbonji Edjenguélé教授と木村

 


写真2 Mbonji Edjenguélé教授,Mebenga Tamba Luc教授

 


写真3 ヤウンデ第1大学人類学科でのレクチャー

 


写真4 ヤウンデ第1大学人類学科の教員たち

 


写真5 ヤウンデ第1大学人類学科の人たちと

 


写真6 グリベ・ステーション

 


写真7 グリベ・ステーションに集まった村人たち

 


写真8 カメラトラップのデータを取り出す安岡准教授

 


写真9 撮影したグリベ・ステーション

 


写真10 撮影したグリベ村

 


写真11 バカ・ピグミーの葬儀

 


写真12 悪路で車が立ち往生する

 


写真13 新しいフィールドステーションの候補2

 


写真14 新しいフィールドステーションの候補2