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エチオピア農村における母と娘の語りからみる女性性 (womanhood)

 

派遣者:有井 晴香

 
派遣期間:2017年1月21日~4月7日
派遣先:アディスアベバ大学(エチオピア)
キーワード:ライフストーリー、ライフコース、教育開発、ジェンダー、家族
 
1.      研究課題について

本研究では、エチオピア農村に暮らす女性のライフストーリーを分析することを通して、開発政策のもとで既存のジェンダー規範や生計が急速に変化する社会において、世代間で女性性がいかに再構築され継承されていくかを明らかにすることをめざす。

 

エチオピア連邦政府は、近年の急速な経済成長のもと、教育・保健分野に大規模な投資をおこなうことで、女性のエンパワーメントを実現しようとしている。辺境に位置する調査村においては、1960年代以降のプロテスタント信仰のひろがりに加え、学校教育の普及や貨幣経済の浸透の影響を受けながら既存の規範や生活様式が大きく変容しつつある。小学校が設立された当初はほとんどの女性が学校に通っていなかったのに対して、現在学齢期にある女性の多くが就学・就職を経験するようになっている。このような社会の変化を受けながら、女性たちがどのように自らの人生を構築していくのかを明らかにしたい。

 
2.      派遣の内容

今回の派遣のおもな目的はつぎの2点である。ひとつは、これまで調査をおこなってきたエチオピア西南部マーレにてフィールドワークをおこない、女性のライフストーリーの収集をおこなうことである。もうひとつは、アディスアベバ大学において研究会を実施し、若手研究者との交流をはかるとともに、2017年12月に予定されているシンポジウムにおける共同セッションのテーマを探ることである。

 

派遣前半はマーレ内にある4つの農村におもに滞在して、情報収集をおこなった。これまでの継続調査として、女性を対象としたライフストーリーの聞き取りをおこなった。さらに、地域における変化を捉えるために、行政機関を訪問し、教育・保健に関する統計データを収集し、各機関の関係者に対してインタビューをおこなった。

 

派遣後半は、アディスアベバ市内に滞在し、アディスアベバ大学社会人類学科長であるGetaneh Mehari教授の協力のもと、社会人類学科とジェンダー研究センターに所属している研究者とともに、”Women and Education”と題した研究会をおこなった。研究会には2名のポスドクと2名の後期博士課程所属の院生が参加・発表してくれた。また、カウンターパートであるGebre Yintiso教授とシンポジウムに向けた打ち合わせをおこなった。


 
3.      派遣中の印象に残った経験や体験

研究会を通して、現代エチオピアにおいて女子教育は重要なトピックであることを改めて認識した。研究会に参加・発表してくれた研究者4人のうち、ふたりが女性であったことは、エチオピアにおける高学歴の女性の活躍を示すものであったといえる。また、現代エチオピア社会において、女子就学が依然として十分に普及していない地域が抱える問題や、個々の女性たちの人生における選択において就学状況がいかに関わってくるかについて教育学以外の視点から分析することの重要性を改めて実感した。

 

 
4.      目的の達成度や反省点

現地調査においては、予定していたデータ収集を概ねおこなうことができた。女性に焦点を絞った研究・調査をおこなってきたが、今回の研究会で指摘されたように、比較対象として男性を対象とした調査・分析をしっかり積み上げる必要があることを感じた。

 

今回、主催した研究会は小規模なものであったため、互いの研究関心をシェアするためにはとてもよい機会となった。ただ、その一方で、セミナー形式の研究会を主催することができず、研究内容を広く発信するための機会をもてなかったため、次回の渡航に向けた課題としたい。

 

 
5.      今後の派遣における課題と目標

今回の派遣では、エチオピア研究者との交流が主であったため、他地域との比較や、分析枠組みに関する議論が薄かった。今後の派遣においては、他のアフリカ諸地域を対象とした研究者や、同じテーマを扱う研究者との交流を通して、分析枠組みをしっかり固めることを目指したい。また、自分の研究内容を広く発信する場も積極的に活用していきたいと考えている。