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派遣報告3

 

丸山淳子

 
22/01/2017-31/3/2016
– Centre for African Language Diversity, University of Cape Town
-Mbabane and its surrounding area, Swaziland
-Ghanzi and Maun, Botswana
-Riezlern 6, Cederberg, South Africa

 

  • 研究課題について

本研究は、ボツワナのサン社会、南アフリカのサン社会、スワジランドのスワジ社会を対象としてI.土地権回復運動 II.伝統的政治代表者 III.民族文化観光などをめぐる現場で「伝統文化」や「民族的なもの」がいかに表出し、また再編されているのかを明らかにするものである。またそれによって地域社会の集団関係や政治参加、生業活動のありかたにどのような変化が生じているのかを考察することを目指している。それをとおして、南部アフリカのもつ歴史的背景や政治経済的状況のなかで共通して現れる「民族的なもの」の特質と、それぞれの対象コミュニティの持つ特異性を、国家形態や地域社会の中の位置づけの違いに注目して明確にしたい。

 

 

  • 派遣の内容

南アフリカ

滞在中に、進行中の研究を発表する機会を得た。ひとつは、ボツワナの「ブッシュマン観光」に焦点をあてたもので、アフリカにおける住民参加型観光を論じるワークショップにおいて発表した。このワークショップは、サンの文化と教育の振興をめざすセンターにおいて開催され、南アフリカの研究者とならんで、サンのコミュニティ出身のセンター職員も議論に参加した。同センターでは、南アフリカの文化観光に関する調査も実施した。またカウンターパートであるBrenzinger教授の企画運営によるRiezelernの第6回会議においても、“Changes of personal names of G|ui and G||ana San and their socio-historical contact with neighboring Nharo San”と題して研究発表した。

 
スワジランド

スワジランドにおいて毎年開催される王室関連の行事・儀礼の歴史的変遷について調査した。今回は特に、王宮で開催されたマルーラ果実の収穫祭に参加して調査をするとともに、スワジの「伝統衣装」の変化を、国立公文書館、博物館、地元の歴史家などから収集した文書や写真に基づいて明らかにした。また公文書館や博物館の研究者らとも研究ネットワークを構築した。

 

 
ボツワナ

「ブッシュマン観光」を実施している複数の観光地/施設を訪れ、その多様性と現状を解明した。また他民族によるカゴ編みを観光資源とする文化観光についての調査も進め、ボツワナの文化観光の全体像を把握した。サンの文化活動にかかわるNGOや企業へのインタビュー、私が調査を続けているサンのコミュニティでの調査も進めた。

 

  • 派遣中の印象に残った経験や体験

「ブッシュマン観光」に関する調査は今回の調査の中でももっとも興味深いものであった。調査の結果、サンとその近隣民族との関係史の違いが、観光形態に多様性をもたらししていることが明らかになった。「ブッシュマン観光」とそれ以外の文化観光の共通性や違いについてみることができたのも、良い経験であった。
 

 

スワジランドのマルーラ果実の収穫祭参加も、印象的であった。この祭りでは、全国から王宮に集まった女性グループが、伝統衣装を身につけ、食文化を持ち寄り、踊りや歌を披露するなど「スワジの伝統」を実践する場となっていた。また国立公文書館や国立博物館のスタッフは非常に協力的で、彼らの豊富な知識を惜しみなく提供していただいた。

 

 

  • 目的の達成度や反省点

「伝統文化」がサンやスワジの人々にどのようなものとしてとらえられているのかを検討するために、今回の調査では、主としてボツワナとスワジランドの文化観光のダイナミズムと歴史的展開に焦点をあてて調査をすることができた。今回の派遣は、この研究プロジェクトにおける最後の現地調査の機会であったが、このトピックに関して、十分な資料を得ることができた。

 

また、南アフリカでの研究発表の際に得られたコメントや議論は、この研究プロジェクトにとって有益なものであった。とりわけ、観光業に従事するサンの人々との議論は、非常に示唆に富んだものであった。またスワジランドの研究者らとネットワークを構築できたことも、今回の派遣の重要な成果と考えている。

 

  • 今後の課題と目標

今後は、2016-17年のフィールドワークで得られた資料に基づいて、南部アフリカにおける土地問題に関する論考及び、ボツワナの文化観光に関する論考を執筆する予定である。また調査成果の一部は、本プログラムの主催するシンポジウムでも発表すること予定している。